――いじめられた経験を心の中でどう整理していますか。

 当時は逃げる選択肢がなかったし、我慢することしか考えられませんでした。でもいじめる側じゃなくてよかったと思います。美化するわけではないですが、いじめられることによって人の心の痛みが分かる人間になった。いじめる人に言いたいのは、暴言や陰湿ないじめはすべて自分にはね返ってくるということです。

 芸能界で仕事をするようになってから仕事先の人に「杏さんと同じ高校の方に『仲良しでした』と言われました」って伝えられたことがあって。名前を聞いたら当時いじめてきた女子でした。その時は「そうなんですね」と返しました。恨むとかではなく、嫌いな人に関わらず前を向いて歩いていきたいです。

逃げても、頼ってもいいんだよ、と伝えたい

――杏さんの言葉には重みを感じます。

 いじめはいつの時代もあります。セミナーなどでいじめの体験談を話す機会があったんですけど、10代の女の子が「話を聞いてください」って声を掛けてくれて、2人で30分ぐらい話したことがありました。その子は学校でいじめを受けていて家庭環境も複雑でいろいろ抱えていて。その子は話す時に斜め下を見るんです。目を合わせるではなく。でも本人は一生懸命に目を合わせて話を聞いているつもりなんです。病気だった時の昔の私が同じだったから気持ちがすごくわかる。下からのぞき込むようにして目を合わせていろいろ悩みを話してもらって。

「笑おう! 自分で口角を上げて、毎日トレーニングしてみよう」って伝えたら、ちょっと笑ってくれたので、「いい笑顔してるじゃん! すごくいいよ」って話したら、その子が泣きながら笑顔で帰っていきました。今回のインタビューもそうですが、私はいじめられてこんなに悲しかったというつもりはないんです。私の話を見聞きして、生きることに前向きになる方が一人でも増えれば幸せです。いじめから逃げても大丈夫だし、我慢する必要はない。家族や周りの人たちに頼っていいんだよと伝えたいです。

(平尾類)

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