ホールスパイスを油で加熱することをテンパリングという。グローブやクミンシードなどが色づいて、香ばしい香りを生み出す
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 カレー専門の出張料理人として知られる水野仁輔さんが、カレーを科学する事典『食の事典シリーズ 調理科学×カレーの事典』を監修した。カレーのおいしさを構成する要素を5つに分類し、それぞれについてとことん探究した本だ。

 その『食の事典シリーズ 調理科学×カレーの事典』によれば、カレーの味を強めるために最も効果的なブースト材料は「油」と「塩」だという。カレーの味における「油」と「塩」の役割についての考察を、本から引用して公開したい。

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「パンチ力のあるおいしさ」という表現を聞いたことはありますか? ひと口目からガツンとインパクトのある強い味を感じるときに使います。カレーは特にそれを感じやすいジャンルかもしれません。

 最初に持った印象は、その後もずっと継続する可能性があります。味が持つ余韻という効果により、食べている途中も最初に感じた味に引っ張られるからです。

 強い味を生むために活躍するアイテムのトップ2は、油と塩です。一定量に到達するまでは、油も塩も、増やせば増やすほど強い味の印象を生むことができます。ただし、油については、強すぎるとくどくてしつこい味になってしまいますし、塩については、強すぎると全体の味を壊してしまいます。

 ともかく、それほど強力なアイテムだと捉えておいてください。もしも、皆さんがカレーを作り始めるときに「ちょっと自信がないな」と感じるのなら、最初に使う油の量を増やしてみるのはひとつの方法です。

 また、皆さんがカレーを作り終わったときに「ちょっと物足りないかも」と感じたなら、仕上げに加える塩の量を増やしてみるのもひとつの方法だと思います。

 飲食店で提供されるカレーは、どうしても油と塩の量が多めになります。なぜなら、ひと口目から「うまい!」という反応が欲しいから。これは、必然的なことなのです。なので私の中では、この2つのアイテムをカレーの「ブースト(増幅)アイテム」と呼んでいます。

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油と塩の本当の役割