同じ塩でも、自然塩と精製塩で味に差が出る。自然塩には天然のおいしさがあり、精製塩には安定感がある

 では、玉ねぎを炒めるときに鍋の中にある油の役割は? 鍋の中の温度を上げることによって、玉ねぎの表面により強い火を入れます。その結果、アミノ酸と糖がメイラード反応と呼ばれる化学反応を起こします。それによって、香ばしい香りが生まれます。また、玉ねぎ自体をやわらかくして水分が抜けやすい状態を作ります。こうすることによって、玉ねぎらしい風味が強まっていく。すなわち、玉ねぎのポテンシャルを油が引き出すのです。

 油があるおかげで、こんなことが鍋の中で連続的に起こっている。カレーの触媒として活躍するというわけです。

 塩を使わずにカレーを仕上げ、最後に適量の塩を混ぜ合わせるのと、塩を少しずつふり入れながらカレーを仕上げるのとでは、完成するカレーの味が違います。後者のほうが断然おいしい。それはなぜでしょうか?

 最後に塩をまとめて加える場合、塩は、塩分濃度を適正に保つ働きしかしません。途中途中で加えていく場合、塩は、その都度、鍋の中にある素材の味わいを引き出す役割も併せ持ちます。この違いは大きいんです。

 カレーに使う各素材は、一定の加熱を経て細胞壁が破壊され、全透性という状態に至ります。素材の内側と外側で味の行き来が始まり、拡散と浸透を繰り返します。このときに塩が介在していれば、おいしさは強まります。

 本来なら、新しい素材を加えるたびに、塩適量を加えたいところ。ただそこまで細かく気を配るのが難しいため、せめて仕上げよりも中間地点で加えておいたほうが、働きがいいのだと捉えておきましょう。

(構成 生活・文化編集部 森 香織/写真 齋藤圭吾)

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