皇室には、数多くの祭祀や宮中行事があり、さまざまな格式やルールがある。そんな「伝統」を守ってきた皇族方の「あのとき」を振り返る(この記事は「AERA dot.」に2023年1月1日に掲載した記事の再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。
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新年を迎え、日頃の疲れをいやすべく帰省したり旅行したり、はたまた自宅でゆっくり過ごしている人も多いだろう。では、皇室の方々は新年の始まりをどのように過ごすのだろうか。知られざる天皇家の多忙な正月とは――。
天皇家の正月は、忙しい。目まぐるしい行事は、大晦日の夜から始まる。
皇居・宮殿竹の間で天皇陛下は、天皇のためのお祓いの儀式「節折(よおり)の儀」に臨む。天皇の穢(けがれ)を祓い清める儀式で、6月の晦日と12月の大晦日の「大祓(おおはらい)の儀」ののちに行われる。
儀式では、小直衣(このうし)を身に着けた天皇陛下の体に小竹の枝をあてて背丈や手足の長さを測る。「よおり」の「よ」は、竹の節。背丈などを測った枝を折ることから、「節折」という。
天皇家の祭祀に詳しい国士舘大学の藤森馨(かおる)教授は、こうした皇室の祭祀は、平安初期の嵯峨天皇の時代に始まったとする説が有力だと話す。
同じ大晦日の日。前述の「大祓の儀」も行われる。「皇族と国民のためのお祓いの儀式」と藤森教授は説明する。場所は、皇居内の宮中三殿に付属する神嘉殿(しんかでん)、その前庭だ。
戸外の凍えるような寒さの中、ここ近年は主に秋篠宮さまが皇族代表として参列。成年を迎えて以降は皇族時代の眞子さん、佳子さまが代表として祭祀に臨むこともあった。
そして元日。天皇の新年の儀式は、夜明け前から始まる。
午前4時、天皇は御所で潔斎(沐浴)をして身を清める。
皇室の祭祀に詳しい、京都産業大学の所功名誉教授が解説する。
「モーニングコートを着用した天皇は宮中三殿に向かい、綾綺殿(りょうきでん)で天皇のみが身に着ける『黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)』という束帯(そくたい)をお召しになり、立纓(りゅうえい)の冠を被り、笏(しゃく)を持たれます」
続いて、「四方拝の儀」に移る。
「国の安寧をお祈りする祭祀です。天皇ご自身が必ず行われるもので、代拝はありません」(所功名誉教授)