「若くありたい」と「実際に若い」の大きな違い
「そんなことはわかっているし、うすうす気づいている。でも、受け入れたくない」
そういう人もいると思いますので、ここでひとつフォローをしておきます。いつまでも若くありたいという気持ちを持ち続けることは、悪いことではありません。というよりむしろ、好ましいとさえいえます。なぜかといえば、セルフイメージが実年齢よりも若いと、「生存」にプラスに働くからです。
「自分はもう高齢だから死ぬ」
「自分はまだ若いから死ぬわけがない」
大半の高齢者は、後者のように思っています。種の生存戦略としてそのほうが正しいので、本能的にそういう思考になるようになっているのです。
そして、これは実際の死亡率にも大きく影響しています。「自分は若くて有能だ」と思っている自己肯定感の高い人のほうが長生きで、「自分なんか価値がない」とネガティブにとらえている人のほうが早く死ぬということが、研究により明らかになっているのです(※1)。
だから、若くありたいと思う高齢者に対して、私は否定するつもりはいっさいありません。
ただし、「若くありたい」と「実際に若い」はまったく異なるものということを、忘れないようにしましょう。
願望として自分の胸の内にとどめておくぶんにはいいのですが、それを外に出すと――すなわち若いつもりで他人と接すると、たちまち認識のズレや齟齬(そご)が生じ、それが壁となり、老害として扱われてしまいます。老いハラも受けやすくなります。
その点だけは、勘違いしないようにしてください。若くありたいという高い意識を持つ一方で、自分が老害になっている可能性があることを認め、受け入れ、そのうえで対策をとることが推奨されるのです。
(平松類:二本松眼科病院副院長)
【参考文献】
1)J Pers Soc Psychol. 1994 Aug; 67(2): 278-86. doi: 10.1037//0022-3514.67.2.278. The five-factor model of personality as a framework for personality-health research G N Marshall 1, C B Wortman, R R Vickers Jr, J W Kusulas, L K Hervig / Age (Dordr). 2006 Dec; 28(4): 353-61. doi: 10.1007/s11357-006-9024-6. Epub 2006 Nov 29. Do personality characteristics predict longevity? Findings from the Tokyo Centenarian Study Y Masui, Y Gondo, H Inagaki, N Hirose