まず、現時点においても、ChatGPTに代表される生成AIは、大卒の学生程度の事務処理能力は持っていると考えられます。大学入学試験や医師などの資格試験において、「優秀な生身の人間」にも負けない点数を出せますし、それぞれの企業においてカスタマイズした学習をさせることも容易です。
 

人件費よりはるかに安いAIのコスト

 優秀な大学を卒業した人間一人を40年以上雇う場合にかかる数億円の人件費と、生成AIを導入するコストを比較した場合を考えれば、結論は明らかです。

 じつはこれまでも、「自動化」といった流れのなかで、さまざまな雇用の場が減ってきました。FA(ファクトリー・オートメーション)で産業用ロボットや電子制御できる製造装置が普及した結果、工場で働く人の数は減り、働き方も肉体労働的なものから監視、運用するかたちへと変化していきました。「年収が高い」と評判のキーエンスは、まさにこのFAシステムの研究・開発・設計・製造を行っている企業です。

 OA(オフィス・オートメーション)というと、もはやかなり昔の感覚になりますが、ワープロやパソコン、コピー機、業務管理システム、そして総合的なDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れがやってきたことで、いままでも事務職の「椅子」は、業務の効率化、あるいはリストラなどの名のもとに減ってきたわけです。来訪者は無人の受付でQRコードをかざすようになり、出てくるお茶はペットボトルになりました。かつてはその過程にも人がいたのです。

 そして、いよいよ「知的労働」と言われてきたホワイトカラーの仕事が、直接、しかも急激に代替されるときが来たわけです。

 2023年、すでにアメリカの有名なテック企業は、マイクロソフトを除いて雇用を減らし始めました。彼らは生成AIを普及させていく主役でありながら、AIによってその他のホワイトカラーが必要なくなってしまったのです。

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頭脳労働ではなく、意思決定