人から切り離せない仕事が残る

 「その人の名前がブランド化している」状態が、意思決定のできる姿です。「属人化」はこれまで悪いキーワードと思われてきましたが、AIの普及後は、人から切り離せない仕事こそ残るのです。営業で言うならば、誰から買っても同じものであれば価格がおもな競争力になりますが、「誰から買うか」に価値を見いだすようになれば、AIには代替されにくいと考えられます。

 AIの普及は、必ずしも悲観的なだけではありません。AIによる知的労働の代替があらゆるビジネスの効率をよくすることで、新たな需要やビジネスが創出されることも十分考えられます。その場合、よりスリムになった意思決定組織が多数できることを意味します。早めに意思決定型の働き方に転換することができれば、今度は逆にAIを味方として、新しい道を切り開いていくこともできるでしょう。

 一方で、人手不足がはっきりしている「ブルーカラー」への転職を考える人も、自然なかたちで増えていくのではないでしょうか。 

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川村秀憲

川村秀憲

かわむら・ひでのり/人工知能研究者、北海道大学大学院情報科学研究院教授、博士(工学)。ニューラルネットワーク、ディープラーニング、機械学習、ロボティクス等の研究と併行して、ベンチャー企業との連携も進めている。著書に『10年後のハローワーク』(アスコム)がある。

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