ホワイトカラーは危機 イラスト/山田タクヒロ
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 AIが人に代替するのは知的労働の分野であり、これを担ってきたホワイトカラーは今後、働き方を変えていく必要があるのかもしれない。人工知能研究者・川村秀憲氏の著書『10年後のハローワーク』(アスコム)から一部を抜粋し、労働者に求められる発想の転換について解説する。

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 AIの成長と普及によって、いまある仕事が10年後どうなっていくのかを、私なりの分析を込めて考察していきます。実際は、企業あるいは業種としてAI時代に残りやすいものもありますし、同じ企業でも職種によって代替の度合いは違ってくるでしょう。

 AI以前の情報技術の発達においても人が削減されてきたことは明確ですが、人を減らしてきた企業が衰退したかというと、それはまた別の問題だということです。かけ合わせながら考えることがポイントになるでしょう。
 

ホワイトカラーが瀕する危機

 AIの成長と普及が端的に代替するのは、あらゆる業種、企業における「知的労働」、つまりいままでホワイトカラーが生み出してきた価値です。

 どんな業界であろうとホワイトカラーが瀕する危機に大きな違いはありません。もっとも、業種や企業によってはそこまでAIによるネガティブな影響がなかったり、むしろメリットを得て成長したりすることもあります。そうしたなかにいるホワイトカラーは、企業全体として需要が増え、業績が伸びることで逆に守られたり、企業内でていねいなリスキリングの機会を得る余裕を与えられたりするかもしれません。

 一方で、業種、企業としてもAIに代替されてしまう場合は、企業も生き残りをかけて事業を再構築するしかありません。すると真っ先に「椅子」が少なくなるのは、製造的な仕事ではなく、ホワイトカラーになると考えられます。

 なぜホワイトカラーが「なくなるかもしれない危機」に瀕しているのか、改めて整理しておきましょう。

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川村秀憲

川村秀憲

かわむら・ひでのり/人工知能研究者、北海道大学大学院情報科学研究院教授、博士(工学)。ニューラルネットワーク、ディープラーニング、機械学習、ロボティクス等の研究と併行して、ベンチャー企業との連携も進めている。著書に『10年後のハローワーク』(アスコム)がある。

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ホワイトカラーの仕事はなくなる?