AERA 2024年7月8日号より

「哺乳瓶で国内9割シェア(22年)ですが、総利益率の54%が中国事業、日本事業は34%(23年12月期・通期)。今第1四半期の営業利益は27億円、前年同期が34億円ですから減益スタートです。背景にALPS処理水問題がありますが、処理水に関しては底を打った感もあります。とはいえ中国のウェートが高い点がいいか悪いか。投資家により判断が分かれます」

 ピジョンは少子高齢化が株価にネガティブといわれてきたが、見事「国際化」。この点を鈴木さんは評価していた。

「将来性は未知数だが、今のタイミングで投資すれば業績回復の芽があるかもしれない」

 鈴木さんが「推奨するわけではないですが、相変わらず安定していますね」と名を挙げたのは29位の三菱HCキャピタル。リース会社である。利益面は21年3月期以降、右肩上がりだ。配当は累進高配当株指数30銘柄中、最長の連続増配(しかも25年)。株価も1千円台で買いやすく、個人にも好まれる。

 最後に今回の除外銘柄も見ておこう。今期予想か前期実績で累進配当が途切れ、除外されたのは14銘柄中4銘柄。それ以外は配当維持か増配だが、株価上昇による利回り低下ではじかれた。たとえば三菱UFJ、三井住友、みずほの3大メガバンクはいずれも増配だが「卒業」。日経累進高配当株指数は「10年以上、配当維持か増配銘柄のうち高利回り順に30銘柄」なので機械的に落ちた形だ。

 入れ替え銘柄発表の際、ネットでは「メガバンクを除外するなんて」と揶揄する声もあったが、日経は規定に沿って入れ替えているだけ。そこに投資判断的な「意思」はない。

「採用ルールにより一定のクオリティーが保たれている面もあります。メガバンクが落ちたのはルール上、仕方のないこと。ここ1年で株価が伸びた銘柄の利回りが下がり、除外されただけです。銀行株は業績よりも金利の方向感のほうが株価に影響します。流動性も心配なし。現状でも配当利回りは3%台をキープしていますから、今すぐ買って長期保有する分には問題ありません」

(経済ジャーナリスト・向井翔太、編集部・中島晶子)

すずき・ひでゆき/SBI証券投資情報部長。日栄証券(現SBI証券)に入社後、リテール営業部、調査部、株式部などを経て現職(撮影/写真映像部・上田泰世)

AERA 2024年7月8日号

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。「AERA」とアエラ増刊「AERA Money」の編集担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などの経済関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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