A:その答えは復習の仕方によって変わる。ノートの言葉をそのまま書き写すだけでは、理解を深める効果はほとんどない。教科書の線を引いた部分や公式に目を通すのも同じだ。どちらも受け身の勉強であり、それでは科学者が言うところの「流暢性の幻想」が生まれる恐れがある。
人は、いま答えがわかれば、翌日、あるいは翌週になってもそのまま覚えているに違いないと思いがちだ。だが、必ずしもそうではない。線を引く、またはコンピュータやノートに書き写すだけでは、その内容を深く脳に刻み込むことにはならない。
一方、大事な箇所に線を引いたノートを復習し、その後ノートを見ずに書き起こすのであれば、思いだそうとする働きが強くなる。こちらのやり方のほうが、復習としてははるかに効果的だ。
それに、自分が覚えていないことがその場で明らかになるので、どこに戻って何を復習すればいいかもわかる。
Q6:ソーシャルメディア、そしてスマートフォンをはじめとする電子機器が学習を妨げていると懸念する声は多い。注意がそれることは、悪いことなのか?
A:講義を聴くときのように、一定のあいだ集中力を要することをするときは、注意をそらすものは邪魔になる。だが、問題を解いていて行き詰まったとき、その状況から脱するには短い休憩をとるのがもっとも効果的である。
そういうときは、5~20分程度の休憩をとり、フェイスブックを見る、メールに返信する、スポーツの試合の途中経過を確認する、といったことをすればいい。取り組んでいる問題から自ら離れると、間違った思い込みから解放され、手がかりを違った側面から見られるようになるので、新たな気持ちで問題と向きあえる。
その問題は、数学の証明や積分の問題かもしれないし、書き方に悩んでいる作文かもしれない。いずれにせよ、問題を解決したいという意欲があれば、問題から離れて休憩しているときでも、脳は無意識にその問題のことを考え続けている。
しかも、問題から離れることで、向きあっていたときに抱いていた固定観念や間違った方向へ進もうとする考え方から解放された状態で考えられるようになる。
(※この原稿は書籍『脳が認める勉強法』の巻末付録より一部を抜粋して構成したものです)