最近はまたどこかで会えると思うようにしています。情報交換できるし、実際に会社に戻ってきてくれる人もいます。10年ほど前から(退職者を元の会社で再雇用する)アルムナイ採用を行っています。

それに、われわれも中途採用しています。カルチャーがちがう人が入ってくることで新しい価値を生み出しています。逆に、われわれが育てた人が外でお役に立てれば、それが社会の活力になっていくと思うようになりました。われわれも社会に送り出さないといけないのです。

 ただ、そう思えるようになったのは、つい最近ですよ。

撮影/写真映像部・松永卓也

――最後に、若い世代が読んだら人生の糧になるような本をうかがっています。工藤さんのおススメの本を教えてください。

工藤:2冊用意してきました。1冊目は『美味礼讃』(海老沢泰久著/文春文庫)です。辻調理師学校をつくった辻静雄さんについて書かれた本で、大阪読売新聞の記者だった辻さんが、日本でフランス料理を広めていく様子が描かれています。

包丁の使い方を身につけようと毎日魚を30本おろしたり、アドバイスを受けてフランスに渡り、ポール・ボキューズといった一流シェフと縁を結んで日本に招聘したり。頭でっかちにならずに行動し、他人のアドバイスを素直に受け入れ、試しにやってみて、そこから道を切り開いていく。その姿勢に共感するとともに、物語としても楽しく、疲れちゃったときに読むと元気が出る本です。

2冊目は、セネカの『人生の短さについて』。2000年前のローマ帝国の時代を生きた哲学者の本です。この本で私が印象に残っている一説をいくつか紹介しますと…

暮らしとモノ班 for promotion
7月16,17日開催Amazonプライムデー。八村塁選手が厳選するアイテムは?
次のページ
明日のことばかり考えるよりも……