青い袈裟(けさ)を着た、仙台の松川だるま
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 茶道に「余情残心」という言葉があります。

 お茶会でお客様をおもてなししたあと、お客様の帰路やその後のことに思いをはせる。その思いやりの気持ちが本当のオモテナシ。僕はそんな意味にとらえています。

 我々も、モノヅクリにおいて、また日本のモノヅクリを全国に紹介するお店として、「思いやり」を一番大切にしています。作った人と、使う人。仲立ちする我々が両者の気持ちに思いを至らせることで、つなぐ役目が果たせるのだと思います。とは言っても、つい自分のことばかり考えちゃう時もあります。難しいモノです。

 様々な産地を巡ってたくさんの方々にお会いしていると、思いがけない「思いやり」に触れることがあります。

 先日、仙台の松川だるまの作り手さんのお店にお邪魔しました。松川だるまは、写真の通り、青い服を着ただるまです。この青は「袈裟(けさ)」。一般的なだるまの赤は、神社や鳥居に用いられる赤と同じで、古くから魔よけの色として使われています。その上に青い袈裟を羽織ったイケメンだるまが松川だるまです。昔から仙台の人々に縁起物として親しまれています。

 お店には突然伺ったのですが、奥で作業していたおばあちゃんのサトウさんが、「あらよくいらっしゃった」と、細かい話も聞く前にまずお茶。そして、あんころ(僕の大好物!)と、おばあちゃんが作った干し柿(実は苦手)が。苦手なものは最初に食べるタイプなので、おばあちゃんの気を悪くしちゃいかんと、エイッと口にほおばり、舌以外に全神経を集中させ、かみ砕き、お茶で一気に流し込みました。「おいしいっ」と叫んでからあんころ餅に取り掛かると、奥からおばあちゃんが「あれま」と言って、ペーパードリップしたコーヒーと、なんともう一つ干し柿が……。このままでは命にかかわるので、「すいません、サトウさん、僕ダイエット中」「あんころ餅たべてるじゃないの」と、まるでドリフ。

 全国でこんな愉快な出会いを繰り返し、ああ今あの人どうしてるんだろう、って思う人がたくさんいます。

 あのおじいちゃんどうしてっかな、年末体調崩したって言ってたよな。あのおっさん、新しいしょう油開発するって言ってたけど連絡無いな。あ、来週広島行くからひさびさにあのおばちゃんに会いにいこう。こうやって思いを巡らすのもまた楽しいひとときです。

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