そして2位の「勝手にしやがれ」は、レコード大賞にも輝いた、誰もが認める曲。スージー鈴木氏は「いま聴いても本当に音がカッコいい」と声を弾ませる。
「当時、まだ20代の船山基紀が編曲して、日本レコード大賞では大賞以外に編曲賞も受賞しています。エコーが深い音像で、何しろ極めつけはイントロですよね。船山氏は派手なイントロを作るのがうまくて、聴いたら一発でこの曲だとわかる」
船山基紀は、中島みゆきの『悪女』(82年)、少年隊の『仮面舞踏会』(85年)、C-C-Bの『Romanticが止まらない』(85年)を手掛けた名編曲家だが、「勝手にしやがれ」は船山氏のキャリアの中で最初の成功事例となった。
「沢田研二の歌唱ももちろん素晴らしいのですが、この曲が愛され、また今回のアンケートでこうして2位に選ばれたのは、サウンドそのものも影響していると思います」(スージー鈴木氏)
3位の「カサブランカ・ダンディ」については、まず歌詞に関してスージー鈴木氏からひと言。
「女の頬を張り倒す、という歌詞が、昭和の“不適切歌謡”だと(笑)、最近しばしば説明されますが、阿久悠氏はそんな単純な歌詞を書いていないのです」
歌詞に出てくる“ボギー”とは、映画『カサブランカ』の主演俳優のハンフリー・ボガートの愛称であり、ボギーのいた時代を回顧した歌詞なのだという。
「決して沢田研二自身が女性を張り倒しているわけではない(笑)。最近、勘違いされがちですが、阿久悠氏はそんな粗暴な歌詞を書く人ではないとお伝えしたい」
昭和と令和をタイムスリップするテレビドラマ『不適切にもほどがある』(TBS系)のカラオケシーンで取り上げられたことから歌詞が再注目されたが、そういうことも含め、昭和、平成、令和と後世に長く残るものなのだろう。
声がひたすら素晴らしい!
では、沢田研二を聞き込んできたスージー鈴木氏が選ぶ究極の一曲とは。
「シングルバージョンではなくて、アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』に収録されているバージョンの『渚のラブレター』です」