団地や工場などへの給水に安定した水圧を与えるための施設、給水塔。めくってもめくっても給水塔。本書は全国63カ所の給水塔のある風景をおさめた写真集である。
 あとがきに〈なすすべなく不器用にその場に立ち尽す〉とある。日常の光景にヌッと現れる、怪獣または巨大仏的インパクト。無機質な存在感にある種の不気味さ、異形感をおぼえるいっぽう、機能のために生みだされたフォルムには、「工場萌え」の要素も感じる。それぞれ個性的な形状をしていることも、あらためて発見。
 インフラの発達にともなって、給水塔はその役割を終え、実は徐々に姿を消しつつある建造物である。本写真集に収録されている中にもすでに解体されたものもある。そういえば近所の団地で独特の存在感をかもし出していた給水塔も、団地建て替えにともない姿を消した。
 どこか海外の風景のように見えるものもある。くらしに密着した存在の建造物でありながら、ほとんどの写真に人物が写っていないところにも、美学を感じる。

週刊朝日 2016年1月15日号