イラスト:サヲリブラウン

 まさに、そこに綴られていたのは愛でした。静かで押しつけがましさのない愛が、一文一文からとめどなく溢れています。静かに炎を燃やす彼女が見つけた健やかな生き方は、違いを愛すること。

 世の中を善悪だけでジャッジすると、とんでもなくギスギスします。我々は、いまそういう世の中を生きている。

 悪を許容しろという話ではありません。と同時に、物事は多面的であることを綴れるのが、文学やエッセイだとも思うのです。彼女の作品は、それを改めて教えてくれます。

 なにを綴るかではなく、どう綴るか。連載のネタに困ってばかりの私も、自分を顧みなければならないな。

AERA 2024年7月1日号

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