戦没者の遺骨収集のボランティア
大野さんは政官財と裏社会との関連についても詳しかった。戦後最大の経済事件といわれるイトマン事件でも、旧住友銀行の関連で自分の名前が出たと語っていた。
2005年、指定暴力団山口組の六代目組長に司忍組長が就いた。ナンバー2にはその右腕、高山清司若頭が座った。
まったくマスコミ報道がなかった時点で、
「もうすぐ司組長がトップに、カシラには高山がなりますから」
と教えてくれたのは大野さんだった。半信半疑だったが、ズバリ的中していた。
もっとも、「空振り」も少なくなかった。
「自民党の最高幹部が極秘で北朝鮮に行く」
「アメリカのトランプ元大統領が、おしのびで横田基地にやってくる。トランプ元大統領が乗ってきた飛行機で一緒にアメリカに飛ぶ」
など、どうみても「ホラ」としか思えないものもあった。
だが大野さんは、「本当なんですよ」といつも真顔で話し、何時間でも繰り返す。
面倒に感じることもあったが、丸い大きなメガネからのぞく人なつっこい目、なぜか人をのめりこませる語り口調。憎めないキャラだった。「事件屋」を自称しながら、太平洋戦争の戦没者の遺骨収集や慰霊というボランティア活動にも熱心で、人から頼み事をされると断れないというお人好しの一面もあった。
08年、東京の不動産賃貸会社に対して、
「反社会的勢力と深い関係があることを知っている。記事にされたくなければカネを出せ」
などと脅したとして、恐喝未遂の疑いで警視庁に逮捕され、その後、実刑判決を言い渡された。
これで懲りたかと思ったが、社会復帰後も大野さんの「事件屋」ぶりは変わらなかった。
ヨーロッパのある国の大使と関係があるとして、
「東京の一等地の土地で大きな取引があり、それを仲介する。100億円規模だ」
「ワインを無税で輸入できるので、一儲けして政界にもカネを流す」
「ある国に大量の聖徳太子の旧1万円札がある。日本に持ちこめば現金として使える。30億円分を調達している」
といった雲をつかむような話をよくしていた。
またある政治家と親しく、今年1月から2月ごろには、以前、贈収賄事件で逮捕された政治家の「コンサルタント」と称して、
「なんとか無罪をとりたいので協力してくれないか」
と頻繁に電話があった。話を聞いたがとうてい無理な相談で、大野さんの努力はむなしく、有罪判決だった。