アニメ「鬼滅の刃」柱稽古編のティザービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
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 6月23日夜、アニメ『鬼滅の刃』の新シリーズ「柱稽古編」の第7話が拡大版で放送された。「柱稽古編」も第8話を残すのみ。鬼殺隊を支える「柱」に関する考察記事を再度お届けする(2024年5月20日に配信した記事の再掲です。情報は当時のまま)

【画像】鬼殺隊「最強」と言われる“柱”はこちら

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【※ネタバレ注意】以下の内容には、アニメ、既刊のコミックスのネタバレが一部含まれます。

『鬼滅の刃』アニメ新シリーズ「柱稽古編」が、SNSで早くも話題になっている。12日に放送された第1話では、鬼殺隊の実力者が集まる「柱合会議」で水柱・冨岡義勇が他の柱たちから“孤立”するシーンがあり、視聴者の間でも様々な意見に分かれていた。柱たちにはそれぞれに“秘めた思い”があるようだが、義勇は「俺はお前たちとは違う」と他の柱たちと距離を取ろうとする。それは一体なぜか。義勇の心を苦しめ続けてきた、鬼殺隊入隊試験「最終選別」の出来事から考察する。

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孤立する水柱・冨岡義勇

 刀鍛冶の里の戦いで、炭治郎たちは「上弦の鬼」2体を撃破した。鬼の禰豆子が陽光を克服したという“大事件”とあいまって、鬼と鬼殺隊の戦況は大きく変化した。

 鬼からの攻撃も一時的におさまり、柱たちが後輩剣士を指導する時間が取れることになった。鬼殺隊にとってこれらはまさに明るい兆しだが、柱たちが集結する「柱合会議」では不穏な空気がただよう一幕もあった。

 会議の途中、水柱・冨岡義勇だけは「俺はお前たちとは違う」「6人で話し合うといい 俺には関係ない」という言葉を残して席を立とうとする。これに対して風柱・不死川実弥は「おい待てェ 失礼すんじゃねぇ」と立ち上がり、蛇柱・伊黒小芭内も「関係ないとはどういうことだ 貴様には柱としての自覚が足りぬ」と問いただした。それを見かねた蟲柱・胡蝶しのぶが「冨岡さん 理由を説明してください さすがに言葉が足りませんよ」と声をかけたが、義勇は何も言わずに立ち去った。

 ここで興味深いのは、語気こそ荒いものの、実弥にも伊黒にも義勇への一定の信頼と敬意が見られる点だ。義勇の態度にただ不満をぶつけるのではなく、「どういうことか説明してほしい」という思いがにじんでいる。一目置いていなければ、そうはならない。

 しかし、義勇がかたくなな態度を崩さないのは、過去に受けた“深い心の傷”があるからだ。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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