私は我がが世界一かわいいと心から信じているし、それも「わかります~。誰でも自分の猫は世界一かわいいですもんね」なんて他人に言われた日には瞳孔全開の目で「は? 客観的に見てうちの猫が世界一かわいいって言ってるんですけど」と返すほどの狂信的人物であると自覚していますが、おそらく中川さんはそこまで猫に脳がとろけてはいません。もちろん愛情はすごく感じるのだけど、どこかで淡々と観察しているというか、どこか距離を取っているというか。猫に対してバカにならない、これが猫を描くものの正しい姿なのだと思うのです。語彙が少なくならないように、こうするべきなのです。

 そして、意外にも、猫の出てこない回があります。

 実は私も中川さんも、コロナ禍の直前に猫を飼いはじめた、おおむね猫同期です。そんな時期の記録なので、コロナ禍における街の様子がポツポツと挟み込まれるのです。

 思い返せば、この時期に猫を飼いはじめたのは、本当にラッキーなことでした。

 飼って数か月でコロナ禍が襲い来ると、反抗的な私も政治家や都知事がステイホームだのなんだのと言うのをわりと素直に聞いて、家にたくさんいました。その結果、飼いはじめ初期にものすごく我が猫とベタベタすることになり、我が子(猫)への愛情が猛烈にはぐくまれ、猫は猫で、今のようなとんでもない甘えっ子になってしまいました。家は私にとってもたいへんに居心地のよい場所となり、一歩外に出たときに感じる大変な状況も、家に猫がいるということで少し冷静に受け流せたように思います。

 私と中川さんは猫同期かもしれないが、猫を飼おうが飼うまいが、コロナ禍のあの頃の大変さを味わった全員が「同期」なのかもしれない。そんなことをずっと、うっすらと感じられる作品でもありました。

 ところで、猫は本物がとんでもなくかわいいので、絵にしてもまず本物には遠く及ばない……というのが持論なのですが、中川いさみさんの描く猫は、シンプルなのに悔しいほどかわいい。これは実際の猫にだいぶ迫ってるんじゃないですかね。にゅるっとした線が実際の猫にちょうどいいんですよ。

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