『コロコロ毛玉日記』 中川いさみ 著
朝日新聞出版より7月19日発売予定
私は自分でも猫の本を出しています。
しっかり一冊分書いて出版しておいて言うのも気恥ずかしいですが、猫の本なんて書きたくないと思っていました。
私は確かに猫を飼っています。飼って、めちゃくちゃ愛してしまって、ベタベタに甘やかしています。しかし、それをいくら文章にしても、要約すれば「猫かわいい」と言ってるだけなので、展開も深みもないのです。
だから、ある編集者から猫の本を書きましょうと言われたときも初めは断りました。何度も断り、最終的には折れ、猫を飼うまでの葛藤やプロセスなどに大量のページを費やすことにしました。その結果、私の猫の本は、本の半分を過ぎても猫が登場しません。猫が登場してからの文章については、やっぱり要約すると「猫かわいい」です。
難しいのだよ、猫のことを書く(描く)のは。だって猫は本物がいちばんかわいいんだから。
さて、中川いさみさんといえば、私は特に高校生から大学生にかけての頃、どっぷりハマっていた漫画家です。連載中だった「大人袋」という4コマ漫画から始まり、その頃連載されていた4コマではないほうの「ポジャリカ」「兄さんのバカ!」あたりも買いあさり、さかのぼって古本で「クマのプー太郎」も大人買いしました(古本ですみません)。当時いわゆる不条理4コマブームというものがあって、中川さんの作品はその系譜ではありますが、そこに流れる独特のかわいさや脱力感がちょうど私の好みにスポッと当てはまり、笑いつつもきゅんきゅんしていたのです。
で、造形的にまったくクマではない架空のクマ(プー太郎)を描いていた人が、いま実在する猫を描いている。隔世の感。私がそれをレビューしているのも隔世の感です。
はっきり言ってしまうが、この『コロコロ毛玉日記』も、要約すると「猫かわいい」です。中川いさみさんでも、猫を描くとやっぱり「猫かわいい」になってしまうんだなあ。猫はかわいいからしょうがないな。だって、かわいいもんね(このように、猫のことを語ると人は語彙が貧困になる)。
しかし、私の「猫かわいい」とはだいぶ違うものでもありました。