物価高騰や老後の資金など、安定した収入があってもお金の不安は尽きない。ざっくりでも家計簿をつけることで収支を「見える化」すると、旅行や自分への投資など有効な使い方を見つけられる。AERA 2024年6月24日号より。
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「60歳を超えて今の会社に残ると収入は半分になる」と話すのは、アパレル企業で働く、渋谷区在住の女性Dさん(51)。今年の大型連休、保育園で出会ったママ友たちと食事をした。前回全員で集まったのは、子どもの中学受験が終わった7年前。今は全員が、大学生の親だ。
チェロは買えない
彼女たちは、自身が経営者、親が資産家といった家計に余裕があるメンバー。Dさんの関心ごとである老後資金の情報は、ここでは全く飛び交わない。たとえば「物価高が続けば、老後資金は2千万円じゃなく、4千万円必要らしいね」と話しても反応は薄め。
盛り上がったテーマといえば、最近始めた絵画やヨガなどの趣味の話。チェロを習い始めた薬剤師のママもいた。お金の話で出たのは、家族で断行したハワイやヨーロッパ旅行が、高くついたという愚痴くらいだ。
「円安のこの時期に海外旅行をする人たちの金銭感覚。わが家はチェロなんて買えない。夫は入出金をチェックしている程度で将来、どれぐらい足りないかも分からない」
しかし家計簿は面倒すぎて、つける意味が見いだせない。さらに壁がもう一つ。同じ世帯でも夫と家計を合体させることだ。「どこで何を買ったかは、個人的なこと」。今回取材したほぼ全員が、家計の合体には後ろ向きだった。
そこで今回、元ファンドマネージャーで、女性のためのお金の講座を開催している安藤真由美さんのアイデアをもとに、家計簿を作ってみた。家計下手でも、1年間、自分の暮らしにかかる最低限のお金が、ざっくり分かる方法だ。
近著の『お金の知識があるだけであなたが見られるはずのとびきり輝く世界について』(日経BP)でも、「家計簿で自分の収入と支出を知ることからしか始まらない」と説く安藤さん。また「一般的に家計は同一世帯でオープンにしたほうが無駄は減り、確実にお金は貯まる」とする。「まずは自分の現状把握だけでも。お金の管理を誰かに任せるのは、人生の舵を自分で握れない状態。自分の資産や負債もこの機会に書き出して、確認してみてください」