全国の高校の中で、男子校はわずか2%しかない。そのためか、男女差別的な世の中の空気をつくり出す諸悪の根源のようにいわれることもある。高い進学実績を誇る名門校であっても、男子校を出たばかりの学生たちには、女性との距離感がうまくつかめないところがあり、それが男子校のアキレス腱であることは明白だ。その弱点を補うべく、女子大や女子校の協力を得て、性やジェンダーについて学ぶ男子校がある。『男子校の性教育2.0』(中公新書ラクレ)を著した、おおたとしまさ氏が寄稿した。
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甲南女子大生の助言を得る灘の生徒
兵庫県の男子校「灘」では、近隣の甲南女子大の学生の協力を得て、月経や性的同意について学ぶ授業が行われていた。女子大学生の助言を得ながら、男子高校生たちがさまざまなケーススタディーに取り組む。
授業後、灘生たちは下記のように感想を述べた。
「いつもは男子ノリで話すだけですが、今日はいろいろな意見を聞きながら話すことができました。知識としては知っていることもありましたが、男が頭の中で考えるだけではダメですよね。目の前に女性がいてくれることで、具体的な議論をすることができました」
「そもそもこのような知識が世の中に十分知られていないから、お互いにどこまでを前提にしていいのかわからずに、性のことや恋愛のことや生理のことなどを話題にしにくいのだと思います。このような知識をみんなが学んで、前提が共有できれば、性や恋愛のことももっと話しやすくなって、結果、みんなの不安も減らせるんじゃないかと思いました」
以下は、甲南女子大生の感想だ。
「話すのをためらうんじゃないか?と心配でしたが、学ぼうとする意欲があるし、話もちゃんと聞いてくれました。少しでも知識がついたことで、彼らの将来に少しは役立てたかなと思います」
「男子目線でワーって言われるのかなと思ったら違いました。思っていた以上に、女性のことを考えてくれて、びっくりしました。ネットの中には男性の嫌なところや悪い面ばかりが書かれていて、私もそういうものなのかなと思っていたのですが、実際に触れてみて、そうではありませんでした。やっぱりネットの情報は偏っているんだなと感じました」