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 画像診断支援ソフトウェアなどで、医療AIの社会実装が少しずつ進んでいる。データ共有や開発費用など課題も多いが、医師たちが医療AIに寄せる期待は大きい。AERA 2024年6月17日号から。

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AERA 2024年6月17日号「医師676人のリアル」特集より

 医療AIに対して、医師らの期待は大きい。AERAがMedPeerと共同で医師ら676人に行ったアンケートでは、AI導入への期待や懸念について、「期待が大きい」「どちらかといえば期待している」が49.9%で、「どちらかといえば懸念している」「懸念が大きい」の12.1%を大きく上回った。

現状の業務量は増加

 寄せられた期待で特に多かったのが、「画像診断の見落とし防止」と「業務効率化」だ。

 実際、見落としを防ぐ効果は、現場の医師も実感している。大阪公立大学の植田大樹准教授は第一線に立つ放射線診断医であり、自ら医療AIの開発を手掛ける研究者でもある。研究者としてはMRA画像から脳動脈瘤を検出するソフトウェア、胸部X線画像から肺がんを検出するソフトウェアの二つで企業との共同研究によりプログラム医療機器認証を得ている。

AERA 2024年6月17日号「医師676人のリアル」特集より

 臨床現場でも、医療AIを活用している。最も多く使用するのは胸部のCT検査の画像から1~2ミリ程度の結節を見つけ出し、診断を補助するAIだ。

「医療AIの社会実装によって、患者さんの利益はもちろん、医師に対しても精神的な安心を届けたいと考えています。臨床では、私自身、肉眼で見つけるのが難しい肺の小さな結節を見つけ出す際などに画像診断支援AIを使っています。読影で見逃した結節をAIが検出するケースもあります」

 一方、アンケートで多くの医師が期待を寄せた「業務効率化」は今後の課題だという。現在の画像診断支援ソフトはいずれもセカンドオピニオン型の利用を想定したもので、医師の業務軽減にはつながっていないというのだ。植田准教授は続ける。

「AIを使う場合も、まずはAIを使わないときと同様に自ら読影を行い、その後AIに画像を解析させ、自分の検査結果と照合しています。AIがない場合と比べて業務時間は確実に延びている。見逃し防止にはつながりますが、労働時間の上限規制も始まり、時間は絶対的に足りなくなってきている」

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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