YouTubeもテレビもどちらも好き。「両方ネイティブなギリギリの世代」として、視聴率だけにとらわれないヒットの形を見せてくれた(写真:編集部・福井しほ)
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「会いたい人に会いに行く」は、その名の通り、AERA編集部員が「会いたい人に会いに行く」企画。今週はロバート大好きディレクターに、大阪生まれの記者が会いに行きました。

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 名刺を交換するや、丁寧な口調でこう言った。

「この直前にも取材を受けていたんです。上は着替えたから大丈夫だと思うんですけど」

 同じ日に取材を受けたことがわからないよう、シャツを着替えた。そんな気遣いに「テレビの人」だと実感する。

 篠田直哉さん、28歳。メ〜テレのコンテンツビジネス局で番組制作を手がけ、2023年3月に作った音楽特番はYouTubeの総再生回数3千万回を超える大ヒット番組になった。今春放送の第2弾では、視聴者参加型のクラウドファンディングを実施。番組予算とは別に529万円を集め、話題になった。

 従来の枠組みにとらわれない、今をときめく敏腕テレビディレクター。そんな篠田さんには、20年近く呼ばれるあだ名がある。

「メモ少年」

 名付け親は、篠田さんが愛してやまないお笑いトリオ・ロバートの秋山竜次さん。小学5年生の夏休みにライブDVDを見てから、その面白さにドハマリした。ライブを訪れては前方の席でメモを取り続け、いつしかそう呼ばれるようになった。

 当時の夢は、ロバートになること。コントを完コピし、クラスで再現したりもした。

「内気な性格だったので、人前で何かするのは恥ずかしいという気持ちもありました。でも、『恥ずかしいと思うことがロバートに失礼だ』と思ったんです」

 年を重ねるなかで、世間のトレンドは次々と変わっていった。はやりのドラマアイドル……。それは芸人も例外ではない。

 だが、篠田さんのロバート愛は薄れるどころか、深まるばかり。そんな篠田さんを見た秋山さんからマネジャーに誘われることもあった。

 転機の一つになったのが、進学した法政大学の学園祭だ。実行委員になり、ロバートの単独ライブを企画した。

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