Z世代の女性向けエッセイ投稿サイト「かがみよかがみ(https://mirror.asahi.com/)」と「AERA dot.」とのコラボ企画は第2弾。「わたしと『母親』」をテーマに、エッセイを募集しました。多くの投稿をいただき、ありがとうございました。
投稿作品の中から優秀作を選び、「AERA dot.」で順次紹介していきます。記事の最後には、鎌田倫子編集長の講評も掲載しています。
ぜひご覧ください!
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私の母は美しくて強い女性だ。綺麗な二重まぶた、手を加えなくてもカールしているまつ毛、前向きな考え方、どんな状況でも自分を曲げない気骨。そのどれもが、私の持っていないもの。
幼少期の私にとって、持っていないものは即ち「弱さ」だった。母に有って私に無いものを見つける度に彼女を羨んでは自己憐憫し、遺伝子を継いでいても別の人間なのだと、母を遠く感じた。だけどいまなら、彼女にも「弱さ」があったことが理解できる。
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母は私が小学2年生に上がる頃までシングルマザーだった。あの頃の母は、社会的な強さを持っていなかった。子どもを一人で育てる孤独や金銭的な不安定さといった心許ない境遇は、彼女を常に圧迫していただろう。しかし私にそれを感じさせることはほとんどなかった。母が世界のすべてだった私の目には、彼女に足りないものなどなかったように見えた。
2人で住んでいた古い団地の小さな一室が、大きなお城のように感じることもあった。彼女は私の気づかないところで、自身にないものと向き合っていた。ときどき激高して私を殴ることがあったのは、余裕のない生活が起因した彼女の「弱さ」だったのだと思う。