伊吾田宏正さん

SWAT並みのスキルが必要

 普段の狩猟を行う山中とは違い、市街地は不特定多数の人がいる。移動するクマや銃弾が届く範囲から避難できる人は限られている。そのうえ、弾が跳ね返りやすい建物や道路など、人工物だらけだ。誤射の危険性が高いだけでなく、撃った弾がコンクリートやアスファルトに当たればどこに跳ね返るかわからない。予測できない危険は他にも多く潜むという。

「クマや人の動きなどが流動的で、刻一刻と変わる。不確実な要素が多いなかでの発砲はリスクが極めて高い。わかりやすく言えば、米国警察の特殊部隊『SWAT』のようなスキルが求められる。ところが、実際のハンターの腕にはバラつきが大きいのです」

 ハンターのレベルアップを図るには訓練が重要になる。これまでクマの駆除は猟友会に依存してきたが、それを見直す必要性も出てくるかもしれない。

クマが病院に迷い込み、現場対応にあたる警察官ら =2023年10月、秋田県

指揮系統を整備し責任の所在を明確に

 現場責任者も必要だ。役割分担と指揮系統、さらには捕獲にともなう事故が起きた場合の責任の所在を明確にした体制整備が求められる。

「事故があった場合、少なくともハンターが全責任を負う、という体制にすべきではないと思います」

 では、そんな体制づくりを都道府県や市町村が遂行できるかというと、野生動物管理の予算や人材が限られている現状では、「いきなりは難しい」と、伊吾田准教授は言う。

国の支援が必要

「体制整備については、国の支援が必要になるでしょう」

 鳥獣保護管理法の改正後は、国が地域の事情に即したガイドラインをつくり、それを自治体に示さなければならない流れだ。

「ガイドラインは難しいですが、絶対に必要です。その際、出没現場で交通規制などを担う警察との連携も重要です」

 自治体で野生動物管理の専門職員を育成し、配置していくべきだと伊吾田准教授は言う。そうした取り組みは秋田県や兵庫県、島根県で行われている。今後、自治体が連携して広域で専門職員を配置することも考えられる。

「全国的にクマによる被害が拡大していますが、その管理は場当たり的に行われてきました。大きな視点で抜本的な対策をしていくべきときにきています」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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