ロケットランチャーなどの武器は、近くに住宅がある場所で発見された(発見現場付近の草むら)

「持っている」という噂だけで威嚇になる

 当時の兵庫県警の捜査員は、こう振り返る。

「てき弾は山広会長の自宅に張り巡らされた防御用フェンスに当たり、路上に落ちて大爆発。すさまじい威力だった。抗争に軍用のてき弾が使われたということで、劣勢だった一和会はますます戦意を喪失。一和会が解散して抗争終結にいたるターニングポイントになった。この事件で、てき弾やグレネードランチャー(てき弾発射器)、ロケットランチャーなど、軍用の武器のすごさが知れ渡り、暴力団も密かに入手を試みるようになった」

 山本広会長の自宅襲撃に関わった元組員も、こう話す。

「てき弾を使用したことで、軍用の武器の威力のすごさが一気にヤクザの間で広がった。山口組だけでなく、全国の暴力団がロケットランチャーなどの入手に走るようになった。けん銃はフィリピンなど海外で試射や訓練ができるが、ロケットランチャーなど軍用の武器はそれができない。実際に暴力団が撃てるのかというと、難しい。山本広会長の自宅襲撃でも扱いに失敗して、襲撃した組員がケガをしましたから。ただ『〇〇組はロケットランチャーを持っているらしい』という噂が伝わるだけで、威嚇になり、抗争では有利になる」

 2014年に山口組系の暴力団の「武器庫」が摘発された事件があった。大阪市内のトランクルームから大量の拳銃やダイナマイトなどが見つかり、当初の警察発表では「ロケットランチャーに使用する砲弾」も押収したとされていた。

 このとき警察の調べを受けた関係者は、こう明かす。
「警察発表はロケットランチャーということだったが、裁判では、グレネードランチャーの弾(てき弾)だったことが明かされた。このような軍用の武器は米軍からの横流しか、ロシアや中国マフィアの関係から入手していたと調べを受けたときに聞いた。ロケットランチャーやグレネードランチャーは、発射装置と弾がセットで数百万円程度で取引される。例えばロシアなら、中古のランドクルーザーを3台渡すから密輸してくれと依頼する。3カ月とか半年後に海産物などに紛れて、日本に入ってくるそうだ」

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工藤会の元組員が話したことは…