年賀状はもう書きましたか?
メールやSNSもいいけれど、アナログな年賀状は、新年のあいさつとして味わいがあるかもしれません。
元日に届いた年賀章を見ると、ハンコが押してあることがあります。
普通の漢字とはちょっと違った文字が彫ってあることが多いですね。
印鑑でも見かけるこうした書体、これを「篆書」(てんしょ)といいます。
篆書は神聖な文字とされてきました。奥深い漢字の歴史を少しのぞいてみましょう。

身近なパスポートの表紙にも使われている篆刻(てんしょ)
身近なパスポートの表紙にも使われている篆刻(てんしょ)
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神聖な文字・篆書

中国で漢字が「発明」されたのは、おおよそ3500年前のこと。この時の文字は亀の甲(腹甲)に掘られた占いの文字だったので、「甲骨文字」(こうこつもじ)と呼ばれます。
これが1000年近くの長い時間をかけて、現在と似たかたちに整理されたのが「篆書」です。
中国初の統一王朝「秦」(しん)の始皇帝が、紀元前3世紀にこの文字を中国全土に公布したのでした。
現在の漢字に直接つながるという意味では、篆書はいわばもっとも古い漢字です。
中国では文字(漢字)は「神」(天)から人に与えられるものだと考えられていましたから、篆書は、誕生した時の姿をとどめる、つまり天に近い神聖な文字だと考えられてきたのです。
ところが、篆書は字画が煩雑で、大量のテキストを書くには向いていません。
ですから、篆書は日常の文字としては、広く使われず、「隷書」(れいしょ)が日常の文字として使われるようになるのですが、神聖な権威づけが必要な場面としては篆書が特別に使われてきたのです。

篆書のアート「篆刻」を年賀状に

たとえば石碑の題字などにも多くの場合篆書が使われました。
石碑や書物に「題」をつける行為は、天に向かって物事を「述べる」という意味を含んでいますから、それは神聖な文字である篆書が使われたのです。
日本でも、契約書や登記書に篆書を彫った印鑑が使われる習慣が残っているのは、この考えが引き継がれているといえます。
パスポートの表紙にも使われています。いまでも何か自分の持っているものに印を押すと、なにか特別なものになった、という実感があります。これも中国の古代の文字についての考え方が影響しているといえるかもしれません。
現在、日本で一般的に使われる「楷書」(かいしょ)は、篆書よりも500年以上遅れて登場した書体です。
中国では17世紀ごろになると、この篆書を素材にした「篆刻」(てんこく)が独立したジャンルになりました。
日本でも篆刻を趣味にしている人は多いですし、日展にも「篆刻」の部門があります。
「篆刻のすすめ」といった感じの手引書は日本でもたくさん出版されています。
書道用品店に行けば、安い印材と印刀は簡単に手に入ります。この機会に「篆刻」に挑戦してみてはいかがでしょうか。

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