来年11月の豊洲新市場(東京都江東区)の開場まであと1年を切ったいま、築地の“魚屋”たちの「逆襲」が始まった。
「“築地の市場はハエがいませんね”って、どこの国の人もびっくりするわけだよ。なぜかというと、海水でセリ場や店の中を清掃してるんです。海水が排水溝などを流れるからウジが湧かないんだよ。ところが、東京都の職員は、そういう現場を知らない。新市場では“海水を流すと50年先に建物が腐食するから海水は使いません”とか、とんでもないこと言っている。セリ場で真水を流したら、ウジなど撲滅できないと思うよ」
そう憤るのは、まぐろ専門の「大萬(だいまん)」社長の飯島庸嘉さん。
築地市場は、開設以来およそ80年にわたる歴史の中で、食中毒事件を起こすこともなく清潔に保たれてきた。ところが、石原慎太郎都政の始まった1999年前後から、政治的思惑ばかりに明け暮れている。
いったい誰のために市場を移転するのか。「新市場では海水を使えない」と困惑する現場の声にもあるように、そうした大事な利益が考えられていないのだ。
●仲卸業者約140人が集結 “繁忙期の移転”に再考要請を決定
最近、仲卸業者の怒りが噴出する象徴的な出来事があった。
11月25日、築地市場の厚生会館で開かれた「より良い市場をつくるにはどうしたらいいか?」をみんなで考え、共有しようという集いに、仲卸業者ら約140人が参加。小奇麗な会議室にぎっしりつめかけた仲卸人たちの怒りが、次々に噴き出したのである。
「より良い市場を築くつどい」を呼びかける賛同者に名を連ねたのは、約200人の仲卸人。この日、話し合われたのは、「開場時期」「交通アクセス」「安全対策」「物流・店舗設備」の4つのテーマだ。
中でも、来年11月7日に豊洲新市場を開場させる都の計画に対しては、「なぜ11月なのか?」と、多くの仲卸人が首を傾げる。
「買い出し人に目線が行ってないし、物流のことも何も決まっていない中で、11月7日って誰が決めたのか?我々の先にはお客さんがいる。料理屋さんやスーパーなどがある。そういった目線を考えず、単に東京都さんから言われたことを鵜呑みにして、東京五輪が間に合わないからと言われたと聞いている。我々には、オリンピックなんて関係ない。豊洲をこれから100年使う市場として、美味しく安全な魚を出さなければいけないのに、11月開場は納得できない!」
そう仲卸業者が口火を切ると、会場から大きな拍手が沸き起こった。
これまで都の担当者が説明してきたのは、「2020年の東京五輪の開催に間に合うよう、築地市場内に予定されている環状2号線の工事を終えるためには、17年4月までに市場の解体を終える必要がある」というものだ(開場時期決定の概要はhttp://bylines.news.yahoo.co.jp/masakiikegami/20141220-00041670/の記事参照)。
とはいえ、買い出し人の利便性を考えなければいけないし、市場の運用が見えない段階で最も繁忙期の年末にいきなりスタートする必要がないという理由から、移転時期を再考するよう都に要望することが、こうして参加者の総意で確認された。
移転期間についても、
「4日間に九千数百台のトラックで搬入できるのか。誰が計画を立ててどういう形で商売するのか、シミュレーションもされてない」
などと疑問が出された。