また、交通アクセスについても、

「カゴを持って自転車で買いに来られる方々が、雪や風の日には、勝どき橋などを渡れない。なかなか行けなくなると言っていて、市場に人が集まらなくなる」

「買い出しの方の交通手段が『ゆりかもめ』(ゴムタイヤ式の新交通システム)しかない。往復交通費が高く、始発が遅い(買い出し時間に間に合わない)」「都はどのように考えているのか。何度聞いても教えてくれない」

 などの不安が次々に出された。

●土壌汚染問題は今も放置状態 根強く残る都への不信感

 そもそも、ガス製造工場跡地だった豊洲の新市場予定地では、土壌や地下水に発がん性物質のベンゼンなどの汚染の実態が次々に明るみになり、報告が後手に回り続けた都の対応への不信感も依然、根強く残る。

「地下水モニタリングによる汚染除去の確認は、まだ不十分なままです。土壌汚染対策で、知事から“安全宣言”を出して頂きたい。何かあったときには保証して頂きたい!」

 そう仲卸人が発言すると、ひときわ大きな拍手が起きた。

 10年以上前から築地市場移転問題の取材を続けてきて、当時の土壌汚染問題がいまだに解決しないまま残されていることに驚かされる。移転後に万一、問題が起きたとき、いったい誰がどのように責任をとるのか。

「豊洲の土壌は軟弱地盤で、3.11のときも液状化が起きた。建物の杭が岩盤まで打たれているのかどうか。これから大津波に遭ったとき、どのように逃げたらいいのかシミュレーションしていただきたい」

●オリンピックは2週間だけだが「我々には一生の問題」

「だいたい、要望書を出したり意見を言ったりするとき、東京都様とか、御都とか、馬鹿げてますよ。対等な立場で意見を言うときは、東京都でいいんですよ」

 この日の参加者たちは、決して移転そのものに反対しているわけではない。しかし、これまで情報をあまり知らされず、ずっと封じ込められてきた現場の思いが、次々に言葉となって噴き出してくる。

「やはり仲買人が一丸にまとまらないと何も言えない。舛添都知事は、買い出し人や仲卸人にとってふさわしい時期を見計らって開場するとおしゃっていたのに、いちばん繁忙期に開場すると通達された。この民主主義の時代に、上から言われるだけでは不合理です。知事にお会いして、この声を聞いてほしい」

 集いの後、世話役たちは囲み取材で、そう口々に訴える。

「我々が何も知らされていない中で、開場時期を決めるのはおかしな話。プロセスの情報をきちんと開示し、シミュレーションしていただいたうえで開場しないと、大混乱になると思います」

 都はなぜもっと早く、当事者たちと情報を共有し、みんなで一緒に考えていくフラットな関係の場をつくってこなかったのか。

「我々も死活問題だし、お客様にも迷惑をかける。衛生(検査所)も消防も都も、言っていることがみんな違う。一緒になって情報を共有できないんですか?と聞くと、“それはできません”。都の中でもまとまってなくて、担当者によって意見がすべて違う。そのことを指摘すると“いや、私は聞いてないです”と逃げる。共通の認識とルールのコンセンサスがきちんと取れてから、新市場へ移転すべきです。それが世界の市場です。都や国としてはオリンピックがあるから先に目が行くけど、オリンピックは2週間の問題。我々は、一生の問題なんですよ」

 築地の仲卸には、江戸時代から続いてきた“和の文化”が受け継がれているという。しかし、そうした文化も、都が移転を進めるにあたっては、ないがしろにされた格好だ。

 都の舛添要一知事は4日の定例会見で、移転日について質問を受け、こう発言した。

「業者の中にもいろいろな考えの方がおられるわけなので、この移転日についてはもうずっと議論をしてきて、年末の忙しくならない時期を考えて、ベストだろうということで決めています。ですから、これは今のところ、基本的に動かす予定はありません」

 しかし、その他の様々な問題についての質問は、この日の会見録を見る限り、メディアから出されることもなかった。

 同集いの世話役の1人、三浦水産社長の三浦進さんによると、来年2月初頭により良い市場をつくる集いの第2弾を企画している。そして、こうした声を取りまとめたうえで、都に要望を出す予定だ。

 集いの翌日の先月26日、舛添知事は、築地市場の敷地内を通る環状2号線の新橋(港区)―豊洲間が、来年12月をめどに暫定開通すると発表。都は粛々とスケジュールを進めている。

 はたして、仲卸人たちの「逆襲」の行方は…。

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