AERA 2024年6月10日号

「準備」という言葉を繰り返す。振り返れば、東京五輪直後に、こう語っていた。

「試合の翌日から、パリ五輪で勝つためには何をすればいいのか考え、準備を始めました」

 それから3年。手応えはある。

「一番レベルアップしたのはメンタルの強さです。東京五輪で足りなかったのは『五輪の準備をどういうふうにすればいいのか分からない』と考えていたこと。今は東京五輪を経験したことで、プレッシャーや精神状態が分かる。必要なのは、いつも通りに過ごし、自分のパフォーマンスを出すことです」

 五輪のサーフィン競技は7月27日から。少し早めの7月上旬にタヒチ入りする。

「五輪まで1カ月近くタヒチで過ごす予定です。でもタヒチって本当にサーフィン以外には何もやることがない場所。家で過ごす時間が長いので、居心地の良い場所を作ることは本当に大切なのです」

 そう言って笑う。でも心配は無用だろう。サーフィン以外にもやることがある。それは昨年9月に入学したハーバード大学院の授業やレポートだ。

「五輪競技の前日まで、勉強します。いや、勉強は毎日のルーティンだから、試合の日も勉強するかもしれません。サーフィンは夜にはできませんからね」

 あえてパリ五輪前に決意した、サーフィンと勉強の両立。新たな環境に身を置いたことで、気づきもあった。

「クラスの仲間を見ていて感じたのは、時間の使い方が上手だなということ。僕が子どもの時は『たくさん勉強すれば頭が良くなる』と思っていたけれど、そうではなかった。1日中勉強しているのではなくて、1日2時間だとしても本気で集中することが大切なのです」

タヒチは「波次第」

 大学院に進んでからの生活は、朝から夕方までサーフィンをして、夜に勉強。時には、波に揺られながらレポートのアイデアを考える。時間マネジメントの重要性を強く感じた。

「勉強を始める前に『今日はこれをする』ということをクリアにすることで、無駄なことは考えず思考力が高まり、勉強を吸収できるようになりました」

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