たまには親孝行をと母を温泉旅行に連れてきた三姉妹が旅館につくなり些細な喧嘩をはじめ、それが次第にエスカレート、互いを罵倒し合う修羅場になる……。
「母のような人生は送りたくない」と姉妹は不満げだが、その裏に親への愛情が隠されていて、観終わった後に、じわ~と、しんみりしてしまうのは橋口ワールドの真骨頂だった。
中でも長女・弥生を演じる江口のりこが出色だった。
「いちばん近い他人」である家族のリーダーとして勉学にも手を抜かず、まともな企業に就職、酸いも甘いも経験してきた長女なりの孤独とコンプレックスを好演。
「もう全然わからん! あんたたち、いつも勝手なことばっかりしよる!(九州弁)」といら立つが、彼女の倫理に深い家族愛を見た。
「うっとうしいとか、めんどうくさいとか思いながらも、やはり家族はかけがえのないもの」と橋口監督は話す。
できたら家族で観てほしい。容赦ない取っ組み合いの大げんかの演出は監督の家族愛のたまものだった。
(文・延江 浩)
※AERAオンライン限定記事