
「ブレイクダンスをしていたなら、アクロバティックな技ができるのではないか」というのが理由だったという。
「プロレスラーの体じゃありませんでしたから、いざリングに上がるまでは大変でした。厳しい訓練や技の習得を経て、リングに上がることができました」
デビューは11月4日。リングネームは「ヒロ飯島」。舞台は念願の後楽園ホールだった。飯島さんは“次”を見ている。
「デビュー戦が終わった後、初めて今後のことを考えたら欲が出てきた。次の夢は、レスラーとしてチャンピオンベルトを巻く。そして国技館や東京ドームのリングに上がる。夢とともに成長していきたい」
演歌歌手のとよのみさこさん(62)は去年の4月、「地元の足となり愛される路線の全線開通に向け歌を発信し、黒字化する」という夢を掲げた。その路線とは新潟・福島豪雨で長い間、不通になっていた只見線。去年10月に11年ぶりに全線が開通し、夢がひとつかなった。
歌手デビューは19年。きっかけは、白血病を克服して「これからは人の役に立つために生きよう」と決意したこと。好きな歌を歌い始め、のど自慢に出場して歌手になった。デビュー曲は「只見線」。
「絶景路線として人気の只見線は福島県民にとって大切な足。歌うことで、多くの人に只見線の現状を知ってもらうのが役目だと思って歌い続けてきました。去年、全線開通した列車に私も乗りました。座れないくらいの大混雑で、写真を撮りに来た人もたくさんいらっしゃいました。黒字化させるというと偉そうですが、これからも地元の路線の役に立ちたい」
とよのさんは「列車貸し切りライブ」や「只見線カラオケ大会」を企画し、さらなるPRに努めている。次の夢は「地元の八海山麓スキー場(新潟県南魚沼市)の存続です。老朽化が進み、リフトが壊れたら閉鎖するしかない現状を何とか打破するために、役に立てることをやりたいと思っています」。
嘘から出た実(まこと)という言葉もある。夢がかなうと、さらなる次の夢が生まれる。来年の4月1日には嘘ではなく、夢を語ってみるのはどうか?(本誌・鈴木裕也)
※週刊朝日 2023年4月14日号