4月1日に嘘をつく文化はかなり定着している。今年も多くの企業があえて嘘の面白ニュースをこの日に発表し、話題作りをした。家族間や友人同士で悪気のない嘘を楽しむ習慣も根付いている。これに対し、「PR TIMES」が夢を語ろうと唱える理由を、同社の担当者が熱っぽく語る。

「現実とは違うことを話すという意味では“嘘”も“夢”も同じかもしれません。でも夢には力があると思うんです。夢を言葉にすることで行動が生まれ、応援してくれる人との出会いがあるかもしれません。エイプリルドリームとして夢を発信する場を作ることで、前向きな行動を増やしていきたいと考えて始めました」

 実際、夢を宣言した後に実現までこぎつけた人もいる。商社で働きながらデザイナーとしての仕事もこなす飯島裕之さん(37)は去年、エイプリルドリームに「プロレスラーとしてデビューし、聖地後楽園ホールのリングで闘う」と表明し、その夢をかなえた。

「中学生のころからプロレスが好きで、自分もプロレスラーになりたいと本気で思っていたんです」と飯島さん。

 中学時代、たまたま教育実習で来た体育の先生がレスリングの五輪銅メダリスト浜口京子さんの同級生で、元プロレスラーの父、アニマル浜口さんが経営する道場を紹介してくれた。

「当時のプロレスは今よりも門戸が狭くて、身長制限や年齢制限など厳しい条件がたくさんあったんですね。僕は身長が足りなくて……」

 夢を諦めた飯島さんはブレイクダンスにのめり込む。大勢の観客の前で演じる、対決があるというプロレスとの共通点に惹かれたからだ。

「もう一度、プロレスラーに挑戦したいと思ったのはコロナの期間があったからです。ブレイクダンスも含め、エンタメが夢も希望もない世界になってしまった。そこからの反骨心でしょうかね」

 SNSで宣言し、エイプリルドリームにも応募すると、プロレス団体「JTO」のレスラーから声がかかった。

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