たかまつなな(手前)と木本武宏さん

みんなから「死ぬなよ」という連絡

――気持ちがすごいこもったタイトルですね。だまされたと気づいたとき、気分が落ち込んだり、沈んだりというのは大丈夫でしたか?

 もし自分が一人で全資産を持っていかれ、ひとり暮らしで家族もいなくてという感じだったら、死んだほうが楽かなって考えたかもしれないです。でも、今回はまず仲間も一緒に被害に遭っているし、家族は不安になっているという中で、どう考えてもそんな発想にはならなくて。どう乗り越えようかということばかり考えていたんです。

 ところが、毎日いろいろな人がありがたいことに心配して連絡をくれました。事が事だからみんな「死ぬなよ」とか「最悪の選択するなよ」みたいな連絡をくれる。相手は僕一人に送っているんですが、受け手(木本さん)はそれを一日に何通ももらうわけです。そこに死ぬなよ、死ぬなよ、死ぬなよ、死ぬなよ、死ぬなよ。翌日も死ぬなよ、死ぬなよ、死ぬなよ、死ぬなよっていっぱい言われるんですよ。そうすると、逆に人間って死ななあかんのかなって思ってしまうんです。

――そういうとき、どうやって前を向いたのですか? こういう方に支えてもらったとか、ご自身の中でこう捉えたら楽になったとか、同じように詐欺に遭って自分を責めてしまっている人が少しでも楽になる方法があるといいなと。

 (一時期は)家のテーブルはぐちゃぐちゃになってて、テレビのリモコンを取るときに、かき分けて取るとかそんな状態になっていたので、さすがにもうあかんなと。せめてリモコンぐらいはすぐ取れるようにしようと思って、2つあるリモコンを真ん中に持ってきて、まっすぐに並べて置いたんです。ぐちゃぐちゃの(テーブル)の中に2つだけそろっているものができた瞬間に、その周りも気持ち悪いなと思って、この紙を捨てておこうとか、ちょっとだけ周りもきれいにしようという気持ちがわいてきたんです。

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枠の中だけで仕事をしていた