サブカルの道を行くも とことんはハマれず悶々
公開当初からの読者で、今年3月に林との共著『1日1つ、読んでおけばちょっと安心! ビジネスマン超入門365』(太田出版)を出版した絵本作家のヨシタケシンスケ(50)は、「林さんの文章は、役立つ物とそれ以外の物を同じ解像度でフラットに見ているのが伝わってくる」と話す。
「社会での所作や常識に対して、『それ本当?』って素直に反応できる状態をキープできる方だなと思います。最近一緒に出した本にも、ビジネスシーンのあるあるネタをまとめましたが、僕の場合は人間関係のネガティブな部分に目が向きがち。でも林さんは、そこを面白がり続けるぞっていう矜持(きょうじ)みたいなものを感じますね」
いつから社会を面白がる視点で見渡すようになったのか。意外にも林自身は「本当にごく普通の少年でした」と過去を振り返る。
「好きな漫画はドラえもん、小学生の頃は友達と缶蹴りして遊んだり。いやあ普通だ(笑)」
ただ、「俺には何かできるはずだ」という根拠のない自信だけはあった。くすぶる自意識は高校に入るとさらに強まり、「ガロ」に影響されてシュールな漫画を描いたり、8ミリフィルムで映画を撮ったりと、「典型的なサブカル男子が通りそうな道の真ん中を歩いていた」と言う。
「でも、それも何か違うぞと思っていました。下北沢の小劇場でテレビでは言えないようなネタを見て笑うみたいな生活は閉じた感じがして。メインカルチャーには乗れないけど、サブカルにもとことんはハマれない、中途半端な感じでしたね」
悶々(もんもん)とした日々を脱するきっかけは、大学時代に訪れる。高校卒業後、林は埼玉大学の教養学部に進学。専攻したコミュニケーション論のゼミで、「勉強は正しくなくても良いと学んだ」。
「ゼミの研究室には、大量の写真週刊誌が保管されていました。そこで教授から『海外のニュース番組で、最後にカメラが引きになってキャスター同士が話すと、視聴率やキャスターの人気が上がる』みたいなことを研究している人もいると教えてもらった。『そういうのもありなんだ!』と目から鱗(うろこ)が落ちた感じがしましたね」