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 なんとなく症状が似ている「うつ病」と「認知症」。うつ病は早期発見や早期治療が大切だが、認知症だと思い込んで対応が遅れてしまうことも。正しく、早期に治療をすれば、本人だけでなく周囲も苦しまずに済む。二つの病の違いとケア法を整理する。AERA 2024年6月3日号より。

【図を見る】「うつ病」が「認知症」に見える? 症状を比較!

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 うつ病の治療を始めずに悪化の一途をたどる人も少なくない。理由は、年齢的なことから周囲に「認知症」と受け止められてしまうからだ。

 確かに、ぼんやりしたり、忘れっぽくなったり、認知力が低下したり。そうなった時に「きっとこれは認知症のせいだろう」と捉えてしまうのも自然なことのように思える。

 では、どうやって見極めたらいいのだろう。

 東京都立松沢病院精神科医長の新里和弘さんはこう指摘する。

「一番大きな違いは進行の仕方。比較的急に症状が出るのがうつ病で、数年前から緩やかに進行するのが認知症。その症状がいつから出たのかで、判断するのが有効と思います」

認知症は能力低下隠す

 もう一つが本人のとらえ方の違いだという。

「うつ病の場合、作業効率が低下して、能力の低下が見られ、ご本人はそれを強調し深刻に悩みます。一方、認知症の人は、能力が低下しても、それを深刻にとらえず、隠します。返答でも、わからないことがあれば、うつ病であれば『わかりません』と答えることが多いのに対して、認知症の人は周りに助言を求めたり、取り繕ったりすることが多くあります」

 そのほか、うつ病であれば時間や場所など、自分が置かれている状況を正確に認識できなくなる「見当識障害」は少なく、注意力や集中力も比較的保たれる。認知症の人は不安や焦燥感が弱いのに対して、うつ病の人は強いのも特徴だという。

 うつ病の人が発症する認知症の症状に近いものを「仮性認知症」と表現する。「治る認知症」とも言われ、うつ病だけでなく、「甲状腺機能低下症」や「正常圧水頭症」「慢性硬膜下血腫」や「薬の飲みすぎ」などがある。記憶障害や認知機能の低下がみられるからといって、すぐに認知症だと思い込まずに、症状を医師に伝えて診断を仰ぎたい。

「認知症の専門医でも、甲状腺機能の低下によるものだとわからずに、認知症の薬を処方されることもありうる」(新里さん)

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