AERA 2024年6月3日号より

日内変動あればうつ病

 体重増加に疲労感、むくみに記憶障害が出ても、血液検査で甲状腺の機能の低下によるものだとわかれば、それは「治る認知症」なのだ。「慢性硬膜下血腫」も同様だ。転倒などをきっかけに出血し、頭蓋骨の下にある硬膜と脳の間に血がたまることで起きるもので、頭部のCTでわかる。手術などで認知機能の低下も改善する。

 話をうつ病と認知症に戻すと、前述のように症状がいつ出たか、進行の仕方で見るほかにも、新里さんによればチェックポイントがあるという。

「日内変動があればうつ病です。表情も重要です」

 朝、起床後しばらくうつ症状が強く、夕方から夜にかけてその症状が軽快する場合、老人性うつの可能性が高い。認知症のうつ状態ではそのような波が出ることはまずないという。

 一般的には高齢の認知症は、多幸感を感じやすい疾患だ。一方、老人性うつは、不安、焦燥感が強くなる。眉間にシワを寄せて暗い表情になる場合もあるし、表情が乏しくぼーっとしているように見えても、内心に強い不安や厭世観(えんせいかん)を抱えこんでいる場合もあり、わかりにくい。注意が必要だ。

「そういう状態の人は、とりあえず、抗うつ薬を内服するというのもひとつの手。ただ、高齢者のうつ病の場合、抗うつ薬の内服の副作用が出やすい。内服と休養の両輪で治すしかないのです」(同)

 まずは、睡眠と栄養をしっかりととる。ただ、就寝は遅め(少なくとも午後8時以降)にして、昼寝は30分以内。午後5時頃に軽い運動をする。そして禁酒と禁煙。これがうつ対策に良いと新里さんは言う。

 睡眠と栄養をとることは認知症対策にも良い。『80歳の壁』『うつの壁』『ぼけの壁』ほか多くの著書がある精神科医の和田秀樹さん(63)もこう重ねる。

「セロトニンの原料となる必須アミノ酸の一種であるトリプトファンを含む肉類や魚、大豆製品を食べるべし。とりわけ肉です。肉類を食べましょう。そしてなるべく日光にあたること」

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