自治体トップによる職員へのハラスメント。社会問題化する一方で、二次被害を恐れるなどして、訴え出ること自体が難しい実態もある。AERA 2024年6月3日号より。
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沖縄県南城市の古謝景春(こじゃ・けいしゅん)市長(69)からセクハラ被害を受けたとして、市長用公用車の運転手だった女性が、市長と市に計約400万円の損害賠償を求める訴訟を起こしている。公用車の車内で後ろから胸を強くつかむなど計13件のセクハラやわいせつ行為があったとし、市幹部に被害を相談した直後に契約を解除されたと主張。第1回口頭弁論が5月16日、那覇地裁(片瀬亮裁判長)で行われ、市長と市側は争う姿勢を示した。
被害を訴えた原告女性によると、2022年8月から委託契約職員として市長の運転手を始め、3日ほど経つと「女の人はセックスしないと早死にするってよ」などと卑猥(ひわい)な話をするようになった。市役所のそばにある温泉付きのホテルを指し「個室を使える年間パスを持っているから一緒に入ろう」と誘ったり、「出張に一緒に行こう。行くときは別さ。泊まるのは一緒さ」とも言われた。
運転手をやめたかったが、「自分の対応を変えてみよう」と我慢しながら続けていた12月、夜に送った市長宅に到着する寸前、左脇の間から手を入れられ胸を強くつかまれた。体をねじって市長の手を左ひじで振り払いブレーキをかけた。女性が「何するんですか! やめてください! あり得ない」と声を出したが、市長は「いいさ」と笑って車を降りたという。
地方自治体で首長のハラスメントが続いている。2月には福岡県宮若市の塩川秀敏市長(75)の市職員に暴言を繰り返すなどのハラスメント行為を市公平委員会が認定。3月には岐阜県岐南町の小島英雄町長(74)が女性の町職員の尻を触る、背後から抱きつくなど99件のセクハラ行為を第三者委員会から認定され辞職した。4月には岐阜県池田町の岡崎和夫町長(76)が、5月には愛知県東郷町の井俣憲治町長(57)が、ハラスメント行為を認定され、辞職した。