公職選挙法違反の疑いで逮捕された「つばさの党」代表の黒川敦彦容疑者(左)と、根本良輔容疑者。都知事選出馬にも言及している
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 衆院東京15区補選をめぐり、政治団体「つばさの党」の幹部3人が、公職選挙法違反(選挙の自由妨害)」容疑で逮捕された。長年選挙の現場を取材している畠山理仁さんと、選挙プランナーの松田馨さんが事件について語り合った。AERA 2024年6月3日号より。

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畠山:今回の東京15区補選では、(つばさの党の妨害を避けるため)遊説日程を明かさない陣営がありました。彼らから捕捉はされにくくなりますが、有権者は偶然出会うことでしかその候補者の選挙演説を聞けなくなった。少ない情報で投票先を決めることになるので、マイナスですよね。参政党は、妨害する人のスピーカーにかぶせるための消音ボックスを作っています。

松田:そうなんですか!

畠山:参政党は2年前から妨害を受けているので、妨害者を候補者から引き離す交渉役の人もいて、演説会場の平穏を保つための知恵があります。もう一つ、これは僕のアイデアですが、金魚鉢(ガラス張りの選挙カー)を完全に防音にして、そこからYouTube配信すればいいと思ってるんです。

松田:なるほど。

畠山:4月に韓国の総選挙を取材したんですが、比例の候補者はマイクを使って街頭演説ができないんです。でも集会はやりたい。それでまず記者を呼んで、公開取材の体裁をとるんです。その様子をYouTubeで配信し、何百人と集まっている有権者はそれをイヤホンで聞きながら、みんなで歌うなどして一体感を高めていました。

松田:タイムラグはありそうですが、ライブ感もあるし、いいですね。

畠山:僕は今回、攻勢に転じる有権者がいてもいいんじゃないかと思ったんです。つばさの党の人たちへ「君たちの話を聞きたいから、こっちへ来いよ」という人がいたら、妨害に行かなかった可能性もあるんじゃないか。妨害に強い民主主義とでも言うんでしょうか。有権者も冷静に、どう安心・安全な選挙運動の現場を作っていくかを考えないといけないのかもしれません。

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