それからは、五感で作る方向に変わっていった。例えば小麦粉一つにしても、品種によって水を吸い込む量が異なる。そうした材料の本質を知れば、国産の小麦粉と水を使っても、本場フランスのパンと遜色ない味や食感を、日本でも作ることができる。
食材の高騰が続く中、材料を厳選し、技術力を駆使して美味しさを追求し続ける。
「それができるのが『アルティザン』(職人)でしょうね。私、ここまでに33年かかっていますから」と笑う。
「今後の展望の一つは、食文化に新しい風を入れること。まずはアジアを中心に、地球環境に配慮した考え方を啓蒙しているところです」
その信念と使命感を持ち、今日も国内外を飛び回る。(フリーランス記者・小野ヒデコ)
※AERA 2024年6月3日号
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