フジコ・ヘミング(撮影:植田真紗美)
フジコ・ヘミング(撮影:植田真紗美)

 7月からはアメリカとヨーロッパを回る演奏旅行に出かけている。次に日本のコンサートツアーが始まるのは、11月になってからだ。

 今春から初夏にかけては、東京フィルハーモニー交響楽団やポーランド弦楽オーケストラと、全国を回った。秋のプログラムはどう変えるのかを聞くと、「ほとんど同じですよ」という答えが。

「新しい曲を練習する暇がないんですよ。だけども、私の場合は、たとえば大好きなジュリエット・グレコのコンサートに行くときは、いつも同じ曲を歌ってほしかった。名曲っていうのは、そんなにたくさんあるわけじゃない。でも、私はその名曲をいつも歌ってほしいんです。新しい曲に挑戦したら、尊敬されるのかもしれないけど、私のところに来るファンも、何度も同じ曲を聴いて、それで満足してくださっているみたいだし。とにかく、私は一生懸命、間違えないで弾くことだけに集中しています。結局、演奏には、普段の心構えとか全部出ちゃいますからね。生きることは何事も経験だから、いろんな経験をしたことが、私の演奏に出ているんだと思う。でも、何でこんなに人気があるのか自分でも不思議になっちゃうけど(笑)」

(菊地陽子、構成/長沢明)

週刊朝日  2022年9月9日号より抜粋

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