蜜璃は「女」でありながら、人間離れした筋力とパワーがあったため、自分の存在を他者から強く否定されたことがあった。そのため、心の奥底では「自分らしく生きる」ことに惑いがある。そして、14歳という若さの無一郎は、肉体的なピークをまだ迎えておらず、体格面で他の剣士たちに劣り、戦闘経験もまだまだ浅かった。

 さらに、「刀鍛冶の里の戦い」直前には、9名の「柱」のうち、煉獄と宇髄天元が欠けるという事件が起きていた。彼らが抜けた大きな穴を蜜璃と無一郎は埋めねばならない。しかしながら、総合的な戦闘力を比較すると、この段階での蜜璃と無一郎の実力や経験値は、煉獄や宇髄を凌駕するようなものではなかった。

「刀鍛冶の里編」の蜜璃と無一郎のセリフには、「柱だから」「柱なのに」という言葉が何度かみられ、彼らの強い責任感が感じられると共に、「焦り」もひしひしと伝わってくる。

■「自分ではない誰かのために」

 しかし、「刀鍛冶の里」の戦いで、蜜璃と無一郎には、自分の「弱さ」を克服するきっかけとなる出来事が起こる。

 無一郎は死闘の最中、命をかけて自分を助けようとしてくれた、ある少年の姿を見て、真のパワーをその身に宿せるようになる。「人は自分ではない誰かのために 信じられないような力を出せる生き物なんだよ」という父の言葉と、亡き煉獄杏寿郎の「柱として共に頑張ろう」という励ましの声を思い出す。やがて無一郎の目から涙があふれ出した。鬼による痛ましい惨劇の後に、自己を失っていた無一郎が、自らの「心」のすべてを取り戻した瞬間だった。

 蜜璃の場合は、自分の存在意義を見失ったその時に、「甘露寺さんを守るんだ!! 一番可能性のあるこの人が 希望の光だ!!」と叫ぶ、後輩剣士たちの言葉が胸に響いた。涙がこぼれ、蜜璃は自分の本当の力を封印から解く。

<女の子なのにこんなに強くっていいのかなって また人間じゃないみたいに言われるんじゃないのかなって 怖くって力を抑えていたけど もうやめるね>(甘露寺蜜璃/14巻・第124話「いい加減にしろ バカタレ」)

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2人が背負った過酷な「運命」