デビュー時は高校生。オーディションに向かった日、劇場で裸で踊る女性、下の毛を剃る男性を見た衝撃を語った(撮影/大野洋介)

――約8年ぶりの舞台となる「三上博史 歌劇」(2024年1月9日~上演)も、自ら発案した作品だ。寺山修司の没後40年という節目に、寺山が残した膨大なテキストをベースに、数々の名作を三上が熱唱・熱演する。自身にとって初めての歌劇だ。

三上 僕は15歳のときに寺山さんが監督した映画「草迷宮」で俳優デビューしました。

裸で踊る女性、下の毛を剃る男性の衝撃

「草迷宮」の主役募集の要項が載っていた新聞を高校の同級生が持ってきたのですが、当時の僕は映画には全く興味がなかった。高校に入学した時点でガチガチに人生のレールをつくっていて、大学を4年で卒業し、職種はなんでもいいから高額な給与をもらうサラリーマンになると決めていたんです。でも、そこまで7年間あるので、やりたいことをすべて経験してから社会人になろうと思い、好奇心からオーディションを受けてみました。

三上博史さん。撮影/大野洋介 hair & make up 赤間 賢次郎 styling 勝⾒宜⼈(Koa Hole inc.) costume Suzuki takayuki

 神奈川の高校から学生服を着たままオーディション会場に行き、エレベーターのドアが開いたら、そこはもう劇場でした。紫の明かりの中、カモメの絵が飾ってあって、裸で踊っている女性や、男性が下の毛を剃っている光景が目に入りました。

 そんな世界に全く免疫がなかった高校1年生にとっては衝撃でしたよ。そこで審査とは別に、偶然寺山さんと出会い、「オーディションを受けに来たの?」と言われた。「はい」と答えて、名前と番号を伝えたら合格した。そこから5年後、僕が20歳のときに寺山さんは亡くなりました。多感な5年間に寺山さんから受けた影響はすごく大きかったです。

 一番大きいのは、「既成の価値観を全部壊されたこと」。「これがかっこいい」「これがすてき」「これがきれい」という概念が、どんどん壊れていきました。いまだに、その都度、「どの色をきれいに思うのか」「どの匂いが良いと思うのか」ということを考え続けているのは、明らかに寺山さんの影響です。

――寺山修司作品でデビューしてから44年。その影響を、敢えて「呪い」と呼ぶ。

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未だに呪いの渦中にいます