抜けた力がある1人がチームを引っ張るよりみんなが思いを共有し個性を発揮すれば、成績は一段上がった。会社の組織も似ていてその経験が指針になる(撮影/狩野喜彦)
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 日本を代表する企業や組織のトップで活躍する人たちが歩んできた道のり、ビジネスパーソンとしての「源流」を探ります。AERA2024年5月27日号より。

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 2012年8月、野村ホールディングスの執行役・営業部門長と、傘下の野村証券の営業担当専務を兼務したときだ。営業畑を長く歩んで溜めてきた思いを書いた文書を、全国177の営業拠点へ送った。「営業部門が目指すべき方向と具体的戦略について」の題でA4判6ページにまとめたのは、株式などの売買による短期的な手数料稼ぎよりも、客の中長期的な資産形成へのアドバイスを真ん中に置こう、との呼びかけだ。

 いまでは、大半の証券会社が掲げている経営方針だ。でも、当時は売買手数料に主眼を置く営業から抜け出ていなかった。相場が動けば売買が膨らみ、手数料が増えるうまみは、営業部隊の身に染み込んでいた。

 でも、世の中の多くが「こんなに長寿になりながら、将来に不安があって、資産をどう確保すればいいのか」と、悩んでいる。それは長期的に資産をどういう形にしておくかにつながるから、本当に信頼を得なければ相談相手に選ばれない。アドバイスとなると、株式の売買のように電話のやり取りではなく、個々の客が持つ事情やニーズに沿った案内が必要だから、会って説明しなければできない。単純なようだが、営業部隊の行動様式を変えるのは、大変だ。

 でも、若いときから複数の支店で営業をやり、東京・池袋、岡山市、福岡市の3カ所で支店長を務め、執行役になっても中国・四国・九州地域の営業を担当した現場好き。「ずっと思ってきたことを、やらなければ嘘だよな」と、意を決した。

(写真:本人提供)

疑問を付箋に書かせ服の上に貼らせて1枚ずつ順に答える

 全国の支店長や部長ら200人余りが集まる機会に、思いを浸透させる仕組みを考えた。全員を3班に分け、順番に集めた部屋の真ん中に置いた机に、大きな付箋をたくさん用意する。もう一度、A4判6ページに書いたことを話し、それに対する疑問や不安などを付箋に書いてもらい、それぞれの服の上に貼らせた。

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