岩田さんに大阪駅構内を案内してもらうと、どこにいるか、どこに行けばよいかがとてもわかりやすいことが実感できる。

 岩田さんによると駅は安全性、合理性が必要で迷うつくりではダメなのだと。大阪駅には地上階に南北に貫く二つのコンコースがあり、さらに西口の通路が近く開通する予定である。それぞれのコンコースで柱や壁のテーマ素材が決められ、それらを見ると今自分がどこにいるかがわかるようになっている。

「中央コンコースの床によく採用される迷路のデザインにあやかりつつ、メインの2列の列柱の間に絨毯を敷くようにデザインを施して、その上を人々に歩いてほしいという思いを込めました。聖堂では迷路を抜けて神のもとへ向かうともいわれており、駅から新たなステージへ旅立つという意味も込められているように思います」と岩田さんは当時描いた原案のデザインを見せてくれた。

発見する楽しみがある

 さらに大阪駅は利用しやすさを追求しつつも、さまざまな仕掛けがあると教えてくれた。

「中央コンコースには2カ所キヨスクがありますが、そのガラスの壁には全体が植物で覆われたレリーフの中にネコやチョウなどの生き物が隠されています。また、中央コンコースのノースゲートビルディングへ向かうエリアに立つ柱には数多くのアンモナイトが埋もれています」

 このように大阪駅は電車に快適に乗り降りして通過するだけではなく、発見する楽しみがあるのだ。梅田地下街が迷いやすいのとは対照的だ。(ライター・鮎川哲也)

AERA 2024年5月27日号より抜粋

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