歩く速度が速い大阪
歩行速度に関してはさまざまな調査があるが大阪が世界一とのデータもある。阪急大阪梅田駅から御堂筋線への通路を歩くと、あまりの速さに圧倒された。梅田の地下街で流れる人の波のなかで、ここはどこだろうと考えているヒマはない。
試しに平日の朝8時、阪急大阪梅田駅3階改札から目的地を決めず1階に下り、動く歩道などを人の流れに乗って歩いていくと、御堂筋線梅田駅の改札まで来てしまった。慌てて押し寄せる人波を避けつつ改札手前で流れから逃れた。まさに人の波に溺れるところだった。
人の流れから逃れるには流れに乗りつつ少しずつ左右のいずれかにずれていくことだ。突然横切ろうものなら人の波に押し倒される可能性もある。
高速で流れ行く人の流れは、まさに大河でこれこそ大阪のパワーなのかもしれない。
ただ、急ぐことがなければ迷うのも楽しいと加藤さんは言う。
「わたしはもう梅田の地下街で迷うことはありませんが、初めての街に行く時は、ある程度地図を頭に入れておきながらも、自分なりの感覚でこっちに怪しげな空間がありそうだなとか、この路地は何だろうなどと、迷いながら歩くのは楽しみの一つですよね」
機能的な大阪駅の構造
さて、梅田の地にありながら「梅田」の名を冠さないのがJR大阪駅である。大阪の玄関でありホーム上空には巨大なドーム屋根がある印象的な駅だ。
「大阪駅はJR西日本の基幹となる駅で象徴なので、コンセプトをしっかり定めてつくられています」
そう力強く話すのは建築家の岩田尚樹さんである。岩田さんは大阪駅のマスターアーキテクトを務めた建築家・東孝光氏のもとで学び、現在も大阪駅のデザインなどの監修を務めている。
「大阪駅のコンセプトはグランドステーションでローマ・テルミニ駅やパリ北駅のような世界を代表する駅に引けをとらない駅をめざして設計されています」
それらの駅と比較すると確かにそのイメージはあるが、肝心なのは駅の中身である。