仕事は好きで面白い。だが、結婚や出産を考える時、転勤の辞令を受けたら──。女性たちの悩みは男性よりも深い(写真:写真映像部)
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 正社員登用、転職、転勤などキャリアアップの機会は男女共にあるが、同じタイミングに結婚や出産などのライフイベントが重なった場合の女性の選択肢は。AERA 2024年5月27日号より。

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「32歳、そろそろ出産しよう」

 コールセンター勤務の女性(45)に正社員登用の順番が回ってきたのは、そんな時だった。

 契約社員として入社したが、ある時、会社の方針転換により、契約社員の正社員登用が始まった。先輩たちから順に声がかかり、いよいよ自分たちの代かも。そう噂されたのが、結婚して4年目の32歳の時だった。女性は、こう振り返る。

「出産を控えていたので、私にはチャレンジする権利がありませんでした」

 正社員登用に挑戦しなかった理由は、出産だけではなかった。正社員になると、一度は転勤しなければならない。他社に勤める夫も転勤があるので、夫婦がバラバラに暮らすことになるかもしれない。別居したまま子育てができるのだろうか。同年代の夫は、自分より給与が高いし、仕事が好きそう。

「ここは私が夫に譲るべきだな」と思った女性はその後、夫の転勤に伴って、同じ地域に転勤。実家が遠くなり、子育てで親の手を借りることが難しく、フルタイム勤務はあきらめたという。

 正社員登用、転職、転勤と、キャリアアップのチャンスがめぐってきたとき、多くの人が人生設計を考え直すだろう。それが結婚や妊娠、出産を考えたい時期だったら、どんな選択ができるのか。

「せっかくのチャンスだから、頑張ろう。今は仕事以外は考えられない」と思う人もいるだろうし、弾みがついて結婚する人もいるだろう。

 一方、遠距離になったら恋人との関係を続けられないと悩む人もいるだろう。だが「今いい感じの人がいるんです」では、会社に配慮を求めづらい。それは男性も同じだが、仕事を辞めるなど自分のキャリアを犠牲にする選択をするのは、女性が多いのが現状だ。

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