2年前の4月、東京で4日間だけ上演され、それ以降の日程が中止になってしまった舞台「サンソン─ルイ16世の首を刎ねた男─」が2年の時を経て再始動。71歳になった俳優・田山涼成さんは舞台が中止している間に、膝を痛めたことで年齢を意識した。この2年の変化を語った。
* * *
そんなタイミングで、「サンソン~」が再始動することを聞いて、再びやる気がみなぎっていった。ただ、実際に稽古が始まってみると、演出家の白井晃さんからある要求があった。
「前回のようにセリフを勢いよく言ったりはできないし、足を上げようとすると、ふらつくんです(笑)。精神的には何も変わっていないのに、明らかに肉体は衰えていた。ただ、(主演の稲垣)吾郎さんとのセリフの応酬がうまくいったりすると、僕の中ではすごく気持ちがよくて、胸がスッとしていました。なんですが、白井さんの中には僕が前回やった、勢いの良かったときの残像があるんでしょうね。『田山さん、もっとそのセリフ回しを速くできますか?』って言われてしまったんです(苦笑)」
そもそも、自身の“原体験”を大事にしながら演じる田山さんにとって、「サンソン~」で演じるギヨタンという役はとても難しい役だった。
「俳優の演じ方には、大きく分けて2種類あると僕は思っているんです。一つは、役の中に自分に近いものを見つけて、役を自分に引き寄せる演じ方。もう一つは、とにかく徹底的に役を研究して、自分を役に近づけていく演じ方。僕の場合は、どちらかというと原体験を大切にしたいほう。台本で、役についての説明がいろいろ書いてあっても、『あ、そういえば身近にこんな人いたな』とか、『こんなこと感じたことがあるけど、それに近いのかな』とか。自分の体験に基づいて人物を捉えていきたいんです」
そういった演じ方をするようになったのは、田山さんにとっての“芝居の原点”が関係している。
「10歳のとき、NHKの児童劇団で子役として活動を始めたんですが、そのときに朗読や発音なんかを教えてくれる先生から、『普段、お父さん見ていて、どんなことを感じる?』とか、『お母さんの癖を知ってる?』とか、身近にいるいろんな人のことを質問されたんです。その先生の言葉が、自分の中に深く刻まれてしまった。上京してからも、街中で女性と男性が喧嘩してて、女性が車を蹴ったのを見たときに、『ああ、女の人は怒ると車を蹴ったりするんだ』とか(笑)。電車の連結部分で、若い男女がキスしてるのを見て、『羞恥心はないのかなぁ』と思ったり。周りのいろんな印象的な出来事を、記憶に残す癖がついちゃった。演じるときは、その『原体験』とか『原風景』を広げていくようになって」