結婚・出産後も働く女性が増える中、キャリアの両立で課題となる家事育児の負担。夫婦でやるものとして認識を合わせるために必要なことは。AERA 2024年5月20日号より。
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自然体で家事をこなす夫が確実に増える一方で、「家事・育児は女の仕事」という意識を残す人々もまだまだ大勢を占めている。
総務省が実施した2021年の「社会生活基本調査」によると、6歳未満の子どもを持つ世帯で、夫の家事や育児などの時間は16年の前回調査に比べて1日あたり31分増えて1時間54分だった。これは1976年の調査開始以来、最も長かったが、一方の妻はその4倍近い7時間28分(16年より6分減)。その差は調査開始以来ほとんど変わらず、共働き世帯に限ってみると、夫婦の差は1日あたり4時間38分で15年前と全く同じだった。
その背景には、男性はもちろんのこと、女性たち自身が「家事・育児の責任は自分にある」という価値観に縛られてきた過去がある。
大学の研究室で長年秘書や事務の仕事を続けてきた愛知県の女性(53)は、30年前に社内結婚して、「自然な流れ」で退職。上の子が幼稚園に入園後に今の仕事を始め、共働きとなったが、家事も育児も1人でこなしてきた。夫は掃除が好きで子煩悩なタイプだったが、自分の親も夫の親も「家事・育児は母親がやるのが当たり前」と考えていたし、自分でもそうしなければならないと思い込んでいたという。
その後、夫の単身赴任が決まり、そのまま9年が経過。子どもたちが巣立つ頃、ようやく帰任が決まったが、再び一緒に暮らす気にはなれなかったという。離婚は円満だった。
「夫とは真剣な話をあまりできなかったんです。今思うと、夫婦でもっとコミュニケーションをとれていたら、私も今とは違うキャリアがあったかも。転職や資格の取得だって考えられたんじゃないかな」
女性は一瞬遠くを見るような目をして、あったかもしれない未来を口にした。