全国赤十字大会が今月15日、東京都渋谷区の明治神宮会館で開催された。名誉総裁の皇后雅子さまは、赤十字社の活動に尽力した個人や団体に有功章を授与。受章者との懇談の場では、ガザ支援の苦労に聞き入りながら、雅子さまが感極まる場面もあった。
「大変な環境だったのでしょう」
式典のあと、皇后雅子さまは、ガザ地区で負傷者の治療に携わっていた看護師の川瀬佐知子さん(45)にこう声をかけた。
川瀬さんは、この赤十字大会で活動報告をしたひとりだ。過酷な現地の状況を伝える川瀬さんの報告は、鬼気迫るものだった。激しい攻撃が続く日は、寝る前に家族にメッセージを送っていたという。
「『もう目覚めないかもしれない』と覚悟を決めて、目をつむりました」
大阪赤十字病院で看護師をしていた川瀬さんは、昨年7月にガザ北部のアルクッズ病院に入り医療技術支援を続けていた。10月に、イスラエルとイスラム組織ハマスとの大規模な軍事衝突が始まる。退避した南部でも、爆撃の煙があちこちで立ち上る中、負傷者らの応急処置や薬剤調達を続け、昨年11月に帰国した。
「アルクッズ病院に避難者はどのくらい?」
「退避も大変だったでしょう」
川瀬さんとの懇談で、雅子さまはガザでの状況をさらに尋ねた。
負傷者含めて、1万5000人もの避難者が病院に集まり、水や食料の確保が困難であったこと。一度では避難は終わらず、何度かに分けて行われたこと。車の燃料がなく、患者を担架に乗せて代わる代わる担いで搬送したこと。川瀬さんは現地の苦労を説明した。
帰国後の記者会見などで、川瀬さんはガザから退避する際に葛藤があったことを語っている。そうした気持ちに寄り添うように、雅子さまは尋ねた。